「選択的に厳密」とは
特に「科学」という単語が出てくる詭弁(似非科学批判や放射能関連など)で頻繁に見られる詭弁手法で
どこをどのぐらい厳密にするかで結論を変えることができる
という詭弁方法だ.
この原理を解説する.この詭弁方法は次の計算を見ると良く理解できる
1/3 -1/3 = 0
この計算を
「1/3=0.33333333とした. こんなに正確に近似したんだから”科学的”だ. ところで-1/3は四捨五入で0にするのが妥当だろう」
つまり
1/3 -1/3 = 0.33333333 - 0 = 0.33333333
とするのが「選択的に厳密」と呼ばれる詭弁手法だ.
特定の場所だけ「厳密に」つまり小数桁を多くすると,結論を変えられるのがミソ.
嘘を見破られないように
1/3 -1/3 = 0.33333333 - 0.33 = 0.00333333
みたいにされてることもある.
どこをどのぐらい厳密にするかで結論を変えることができるのがこれでわかる.
具体例
例1
- 「黒人の命は大事だ!」と主張する #blacklivesmatter の運動が黒人の命だけを優先して、白人や他の人種に対する差別だと思っている人が結構いる。みんなの命も大事なのにどうして黒人だけに注目するんだと批判をしている。もちろん、みんなの命は大事だが、この文脈では的外れだ。
- この場合は差別とは何かについて選択的に厳密になることで結論を「調節」する議論が行われている
答を好きな値に自由に調節することもできる
(大きい数字,ここでは1000ぐらいにしておこう)*(1/3 -1/3) = 1000*(0.33333333 - 0.333)
などとすると答を任意の数字にできる.
答を3ぐらいにしたかったら
1000*(1/3 -1/3) = 1000*(0.33333333 - 0.33) = 3.33333
答を30ぐらいにしたかったら
1000*(1/3 -1/3) = 1000*(0.33333333 - 0.3) = 33.33333
答を300ぐらいにしたかったら
1000*(1/3 -1/3) = 1000*(0.33333333 - 0) = 333.33333
とすると良い.
選択的に厳密なると答を好きな値に自由に調節できる.
この詭弁方法は一見すると論理矛盾はないように見えるため,特に論理を絶対視する人達を騙すのに適した方法となっている.例えばポリティカルコレクトネスの議論で類似した詭弁方法が良く見られる.